適性検査SPI3を活用した新規サービスの開発に伴走しました。 サービスを提供する事業者の目線だけでは、どうしても見落としがちなユーザー視点。どのようなユーザーが何を求めて使うサービスなのかを、ユーザーリサーチとジャーニーマップを通じて炙り出し、それを体現したプロトタイプの作成まで行っています。
リクルートマネジメントソリューションズは、適性検査事業で長い歴史を持つSPIを、採用等の入社直前・直後だけでなく多様な場面で顧客にご活用いただくべく新たなサービス創出に取り組まれています。
今回ニューロマジックが開発を伴走したSPI-OnBoardingは、SPIで得たアセスメントの結果を新入社員のオンボーディングに役立てるというサービス。新入社員は一般的なラーニングコンテンツを視聴できるだけでなく、自分のアセスメント結果に合わせたアドバイスを受け取ることができ、また人事は新入社員へ定期的に配信されるアンケートの回答によって従業員のコンディションをチェックできるというものです。
新しい人材の組織定着、離職防止は多くの組織が抱える課題であるという確信があった一方、同業他社も多い領域。そのため購買者である「人事」、ユーザーである「新入社員」の二者のニーズに応えるUXと、使い勝手の良いUIの双方を備えたサービスを構築するために、当社が伴走させていただきました。
プロジェクトスタートに際して設定された課題は、主に以下の3つでした。
まずは新入社員の中でもどういった特徴を持った人物にこのサービスが利用される/してほしいのか、ターゲティングを整理しました。「人事にとって購買のモチベーションが上がる(=定着支援が必要だと考える)タイプとは?」「本サービスで定着を支援したときに、もっとも成果が出るタイプとは?」の2つの軸で考え、その両方が重なる領域をターゲットとして設定しました。
上記で定めたターゲットユーザーに近い計8名をリクルーティングしてインタビューを実施。ターゲットユーザーが入社から定着までに抱える課題に関して立てた仮説の検証を行い、また、想定していたサービスコンセプトのいくつかについてフィードバックを得ました。
リサーチを終え、MVP制作に向けてリクルートマネジメントソリューションズのプロジェクトチームとニューロマジックチーム全員でワークショップを行い、以下を議論しました。
事業者がついビジネスゴールを優先するあまり、ユーザーが本質的に何を求め、何に困っているのかを深く検討しきれなかった結果、”使われないサービス”となってしまうケースがよく見られます。ここではいったん、事業者であるリクルートマネジメントソリューションズの「SPIを活用してほしい」という思惑はいったん脇に置き、インタビューの結果をもとに、ユーザーが求めていることは何かを言語化しました。
このサービスでは、新人のコンディションをチェックしたいという購買者(=人事)のニーズも満たす必要があります。人事がどんなモチベーションで「使いたい」と思うのか、そしてこのサービスがその期待に応えられているのかを検証するべく、人事のペルソナを策定しました。※時間の都合上、本項目はワークショップではなくリクルートマネジメントソリューションズに策定いただきました。
どのようなサービス構想にも離脱ポイントはあります。サービスの特性上、新入社員が自ら進んで利用するものではなく、会社(人事)から利用するよう言われて使うものであるという仮説があったため、具体的にどういった心理やニーズでサービス利用をするのか/しないのかを時系列で明らかにすべく、カスタマージャーニーマップを作成しました。
ユーザーニーズを踏まえ、改めて本サービスのバリュープロポジションを共通言語化すべく議論しました。ユニークな提供価値を言語化することで、次の工程で検討するUXおよびUIでどのようなユーザー体験をデザインするべきかが見えてきます。
ワークショップで定義したユーザー課題やバリュープロポジションをもとに、”新入社員の1年間をサポートする”というサービスコンセプトに加え、継続してログインしサービスを利用してもらえるようなコンテンツの構想を開始。先述の通り、使い始めは会社(人事)から利用を促されて使うものであるという仮説のもと、利用初期の段階で「このサービスは自分にとって有益である」と感じられる体験を用意することが重要であると定義しました。
またワークショップで作成したカスタマージャーニーマップにより、ペルソナの新入社員がサービス体験上離脱しやすいポイントが顕在化していたため、どうすれば離脱を防ぐことができるか?を併せて議論しました。これらの課題は、サービスの体験フローだけで解決できるものではないため、コンテンツ自体(サービスの中身)で興味を持たせるフックを作ることがキーになると考え、興味を持ってもらうためのさまざまな建て付けや切り口を思考、提案しました。
インタビュー調査において「自分と同じ状況にいる先輩や同僚に話を聞いてみたかった」という声が多かった。サービスの性質上、個別に話を聞いたり相談したりするコンテンツにはできないが、できる限りそれに近しい状況の実現を検討。「よくあるお困りシチュエーション」を自分ごと化してラーニングできるメールコンテンツを提案した。
いつでも見られるサービス紹介スライドを用意。ユーザーの新入社員がこのサービスを使うことで得られるメリットを、エモーショナルな表現も交えて紹介しました。
グラフィック、ライティングともに、"新入社員の1年を応援する"というコンセプトに沿った、どこか安心できて親しみのあるトーンアンドマナーで構築しました。アドバイスの一覧では、各項目のラベリングをユーザーが自分ごと化できる表現に工夫しています。
SPIという歴史ある人事アセスメントを基盤とした新規サービスの開発に対し、ユーザーニーズの深掘りやジャーニーマップの作成、そしてバリュープロポジションの策定といった上流工程から、それを体現するプロトタイプ制作のためのUX策定、ユーザーが前向きに利用するためのUIデザイン/ライティングなど実制作の過程まで、当社が強みとするアプローチで伴走することができ我々としても大変有意義なプロジェクトでした。
また、働き方や価値観が多様化し、社内コミュニケーションのあり方における重要な課題もきちんと提起され多くの議論がなされるようになった昨今において、SPIというアセスメントツールには自己理解と他者理解を促進し個人をエンパワメントする力があると捉えています。それを今回”新入社員”という、最もサポートを必要する方々のためのサービスとして開発支援をすることができ、大きな意義を感じています。
我々は「誰のためにサービスを作るのか?」という、つい忘れがちで、しかし最も重要な問いを、多々クライアントに提起し、サービスに落とし込むべく議論を重ねました。チームでプロジェクトの目的を解釈し、自分ごと化することを常にプロジェクト伴走のモットーとしているため、故に忖度せず、時に難しい課題提起をさせていただくこともありましたが、それを共に受け止め終始対等に議論してくださったクライアントだからこそ、本プロジェクトが成功したと感じております。
ニューロマジックは、プロセスにおける価値も重視しています。 ワークショップを通じて組織内での気づき・学びを得られた事例は他にも多数ございます。ぜひ一度お問い合わせください。